ムチャリンダ

UD 2.1: With Mucalinda

Sukhā virāgatā loke,

📖 現代語訳

このように私は聞きました。あるとき、ブッダは悟りを開いたばかりのころ、ウルヴェーラーのネーランジャラー河のほとり、ムチャリンダの木の根元に滞在しておられました。

ブッダはそこで七日のあいだ、足を組んだまま動くこともなく座り続け、すべての束縛から自由になった深い喜びを味わっておられました。

ちょうどそのとき、季節外れの大嵐が巻き起こりました。七日にわたって雨が降り続き、冷たい風が吹き、空は厚い雲に覆われました。すると竜の王ムチャリンダが住みかから出てきて、七重にとぐろを巻いてブッダの体を包み込み、大きな頭をかさのように広げてブッダの頭上を覆いました。「ブッダが暑さや寒さに苦しむことがありませんように。虫や蚊、風や日差し、這うものたちに悩まされることがありませんように」——そう願ったのです。

七日が過ぎると、ブッダはその深い心の静まりから出られました。空が晴れ渡り、雲ひとつないことを知ると、ムチャリンダはブッダの体に巻いていたとぐろを解きました。自分本来の姿を隠し、バラモンの若者の姿に変わると、ブッダの前に立ち、両手を合わせて敬意を表しました。

そのとき、このことの意味を深く感じとられたブッダは、心からの言葉をこう述べられました。

「学んだ教えをこの目で確かめた、
足ることを知る人にとって、
静かにひとりでいることは幸せなことです。
生きとし生けるものを傷つけまいとする、
世の中への優しさは幸せなことです。
感覚の快楽を乗り越えた人にとって、
世の中への執着を手放すことは幸せなことです。
けれども、『この私が』という思い上がりを
取り除くこと——
これこそが、本当に最高の幸せなのです。」