ナンダ
UD 3.2: With Nanda“Yassa nittiṇṇo paṅko,
📖 現代語訳
このようにわたしは聞きました。
あるとき、ブッダはサーヴァッティーのジェータ林にある、アナータピンディカの僧院に滞在しておられました。
さて、そのころ、ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダが、何人かの修行者たちにこう告げていました。「わたしは修行の生活に満足できません。修行を続けることができないのです。修行をやめて、もとの暮らしに戻ります」
そこで、ひとりの修行者がブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座り、このことをお伝えしました。
ブッダはひとりの修行者に言われました。「修行者よ、わたしの名でナンダに伝えてください。師がお呼びですと」
「かしこまりました」とその修行者は答え、ナンダのもとへ行って言いました。「ナンダさん、師がお呼びです」
「わかりました」とナンダは答えました。そしてブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座りました。
ブッダはナンダに言われました。「ナンダよ、おまえが修行者たちに、修行を続けられない、修行をやめてもとの暮らしに戻ると告げたというのは本当ですか」
「はい、その通りです」
「しかし、なぜそれほど修行の生活に満足できないのですか」
「お師匠さま、わたしが家を出るとき、シャカ族の国一番の美しい女性が、髪を半分とかしかけたまま、わたしをちらりと見てこう言ったのです。『旦那さま、早く帰ってきてくださいね』と。あの姿が忘れられず、修行をやめようと思っているのです」
するとブッダはナンダの腕を取り、力の強い人が腕を伸ばしたり曲げたりするのと同じくらいたやすく、ジェータ林から姿を消し、三十三の神々が住む天上の世界に現れました。
ちょうどそのとき、五百人の鳩のような足をした天女たちが、神々の王サッカに仕えるためにやって来ていました。
ブッダはナンダに言われました。「ナンダよ、この五百人の天女たちが見えますか」
「はい、見えます」
「どう思いますか、ナンダ。シャカ族の国一番の美しい女性と、この五百人の天女たちと、どちらがより美しく、魅力的で、愛らしいですか」
「この五百人の天女たちに比べたら、シャカ族一番の美女は、耳と鼻を切り取られた醜い猿のようなものです。比べものになりません。足元にも及びません。この五百人の天女たちのほうが、はるかに美しく、魅力的で、愛らしいです」
「喜びなさい、ナンダ、喜びなさい。わたしが五百人の天女を約束しましょう」
「もしブッダがわたしに五百人の天女を約束してくださるなら、喜んで修行の生活を続けます」
するとブッダはナンダの腕を取り、力の強い人が腕を伸ばしたり曲げたりするのと同じくらいたやすく、三十三の天上の世界から姿を消し、ジェータ林に現れました。
修行者たちはこんな噂を耳にしました。「ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダは、天女のために修行をしているらしい。ブッダが五百人の天女を約束したそうだ」
仲間の修行者たちはナンダを「雇われ者」「下働き」と責めました。「ナンダは雇われ者だ、下働きだ。天女のために修行をしているのだ。ブッダが五百人の天女を約束したのだ」と。
そこでナンダは、雇われ者、下働きと呼ばれることを恥じ、はずかしく思い、うんざりして、ひとり静かに世間から離れ、怠ることなく、真剣に、決意を固めて修行に励みました。そしてまもなく、この生きている間に、修行の道の最高の到達点を自ら悟りました。善き人々が家庭の暮らしを離れて出家するのはまさにこの目的のためですが、その目的を自らの智慧によって達成し、その境地に安住しました。そして理解しました。「生まれ変わりは終わった。歩むべき道は歩み終えた。なすべきことはなし終えた。もうこの世に戻ることはない」と。
こうして修行者ナンダは、悟りを完全に成し遂げた聖者のひとりとなりました。
さて、夜も更けたころ、ジェータ林全体を輝かしい光で照らしながら、ひとりの美しい神がブッダのもとにやって来ました。礼をして、かたわらに立ち、ブッダにこう申し上げました。「ブッダさま、ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダは、心の汚れがすべて消え去り、心の自由と智慧による自由を、この生きている間に自ら悟り、その境地に安住しておられます」
ブッダにもまた、このことがわかりました。ナンダは心の汚れがすべて消え去り、心の自由と智慧による自由を、この生きている間に自ら悟り、その境地に安住していると。
夜が明けると、ナンダはブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座り、こう申し上げました。「ブッダさま、五百人の天女を約束してくださいましたが、その約束からお解き放ちいたします」
「ナンダよ、わたしはおまえの心を見通して、おまえが心の汚れのない心の自由と智慧による自由を悟ったことを知りました。神々もまた、わたしにそのことを伝えてくれました。おまえの心が何ものにも執着しなくなり、汚れから解き放たれたそのとき、わたしはその約束から解放されたのです」
そしてブッダは、このことを深く理解され、そのとき次のような心からの言葉を述べられました。
「泥沼を渡り終えた修行者
欲望の棘を踏み砕き
迷いを残らず打ち破った者は
喜びにも苦しみにも揺るがない」
↑ あるとき、ブッダはサーヴァッティーのジェータ林にある、アナータピンディカの僧院に滞在しておられました。
さて、そのころ、ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダが、何人かの修行者たちにこう告げていました。「わたしは修行の生活に満足できません。修行を続けることができないのです。修行をやめて、もとの暮らしに戻ります」
そこで、ひとりの修行者がブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座り、このことをお伝えしました。
ブッダはひとりの修行者に言われました。「修行者よ、わたしの名でナンダに伝えてください。師がお呼びですと」
「かしこまりました」とその修行者は答え、ナンダのもとへ行って言いました。「ナンダさん、師がお呼びです」
「わかりました」とナンダは答えました。そしてブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座りました。
ブッダはナンダに言われました。「ナンダよ、おまえが修行者たちに、修行を続けられない、修行をやめてもとの暮らしに戻ると告げたというのは本当ですか」
「はい、その通りです」
「しかし、なぜそれほど修行の生活に満足できないのですか」
「お師匠さま、わたしが家を出るとき、シャカ族の国一番の美しい女性が、髪を半分とかしかけたまま、わたしをちらりと見てこう言ったのです。『旦那さま、早く帰ってきてくださいね』と。あの姿が忘れられず、修行をやめようと思っているのです」
するとブッダはナンダの腕を取り、力の強い人が腕を伸ばしたり曲げたりするのと同じくらいたやすく、ジェータ林から姿を消し、三十三の神々が住む天上の世界に現れました。
ちょうどそのとき、五百人の鳩のような足をした天女たちが、神々の王サッカに仕えるためにやって来ていました。
ブッダはナンダに言われました。「ナンダよ、この五百人の天女たちが見えますか」
「はい、見えます」
「どう思いますか、ナンダ。シャカ族の国一番の美しい女性と、この五百人の天女たちと、どちらがより美しく、魅力的で、愛らしいですか」
「この五百人の天女たちに比べたら、シャカ族一番の美女は、耳と鼻を切り取られた醜い猿のようなものです。比べものになりません。足元にも及びません。この五百人の天女たちのほうが、はるかに美しく、魅力的で、愛らしいです」
「喜びなさい、ナンダ、喜びなさい。わたしが五百人の天女を約束しましょう」
「もしブッダがわたしに五百人の天女を約束してくださるなら、喜んで修行の生活を続けます」
するとブッダはナンダの腕を取り、力の強い人が腕を伸ばしたり曲げたりするのと同じくらいたやすく、三十三の天上の世界から姿を消し、ジェータ林に現れました。
修行者たちはこんな噂を耳にしました。「ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダは、天女のために修行をしているらしい。ブッダが五百人の天女を約束したそうだ」
仲間の修行者たちはナンダを「雇われ者」「下働き」と責めました。「ナンダは雇われ者だ、下働きだ。天女のために修行をしているのだ。ブッダが五百人の天女を約束したのだ」と。
そこでナンダは、雇われ者、下働きと呼ばれることを恥じ、はずかしく思い、うんざりして、ひとり静かに世間から離れ、怠ることなく、真剣に、決意を固めて修行に励みました。そしてまもなく、この生きている間に、修行の道の最高の到達点を自ら悟りました。善き人々が家庭の暮らしを離れて出家するのはまさにこの目的のためですが、その目的を自らの智慧によって達成し、その境地に安住しました。そして理解しました。「生まれ変わりは終わった。歩むべき道は歩み終えた。なすべきことはなし終えた。もうこの世に戻ることはない」と。
こうして修行者ナンダは、悟りを完全に成し遂げた聖者のひとりとなりました。
さて、夜も更けたころ、ジェータ林全体を輝かしい光で照らしながら、ひとりの美しい神がブッダのもとにやって来ました。礼をして、かたわらに立ち、ブッダにこう申し上げました。「ブッダさま、ブッダの異母兄弟であり母方のいとこでもある修行者ナンダは、心の汚れがすべて消え去り、心の自由と智慧による自由を、この生きている間に自ら悟り、その境地に安住しておられます」
ブッダにもまた、このことがわかりました。ナンダは心の汚れがすべて消え去り、心の自由と智慧による自由を、この生きている間に自ら悟り、その境地に安住していると。
夜が明けると、ナンダはブッダのもとへ行き、礼をして、かたわらに座り、こう申し上げました。「ブッダさま、五百人の天女を約束してくださいましたが、その約束からお解き放ちいたします」
「ナンダよ、わたしはおまえの心を見通して、おまえが心の汚れのない心の自由と智慧による自由を悟ったことを知りました。神々もまた、わたしにそのことを伝えてくれました。おまえの心が何ものにも執着しなくなり、汚れから解き放たれたそのとき、わたしはその約束から解放されたのです」
そしてブッダは、このことを深く理解され、そのとき次のような心からの言葉を述べられました。
「泥沼を渡り終えた修行者
欲望の棘を踏み砕き
迷いを残らず打ち破った者は
喜びにも苦しみにも揺るがない」