破滅への道

SNP 1.6: Downfalls

概要

夜更けに天の存在がブッダを訪ね、「人はどんなとき道を踏み外すのですか」と問いかけます。ブッダは嘘、傲慢、怒りなど具体的な落とし穴を一つずつ示し、自分を見つめる鏡のような教えを語ります。

Dhammakāmo bhavaṁ hoti, dhammadessī parābhavo.

📖 現代語訳

# 破滅への道

このように、わたしは聞きました。あるとき、ブッダはサーヴァッティーのジェータ林にある、アナータピンディカの僧院に滞在しておられました。

夜更けに、輝かしい天の存在がジェータ林全体を照らしながらブッダのもとにやって来て、礼拝し、そばに立ちました。そばに立ったその天の存在は、ブッダに詩で問いかけました。

「人の破滅について、ゴータマさまにお尋ねします。
お聞きするために参りました。
何が破滅へと導くのですか」

「成功を理解するのは容易です。
破滅を理解するのも同じく容易です。
教えを愛する者は栄え、
教えを嫌う者は破滅します」

「おっしゃることはわかりました。これが第一の破滅です。
第二をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「悪しき者を好み、善き者を愛さない。
悪しき者の教えを信じる。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第二の破滅です。
第三をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「眠りを好み、集まりを好み、働かない。
怠け者で、怒りっぽい。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第三の破滅です。
第四をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「できるのに、年老いて盛りを過ぎた
母や父の面倒を見ない。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第四の破滅です。
第五をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「修行者や聖職者、その他の助けを求める者を
嘘で欺く。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第五の破滅です。
第六をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「金貨も食べ物もたっぷりある裕福な人が、
おいしいものを独り占めして食べる。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第六の破滅です。
第七をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「生まれや財産や家柄を鼻にかけ、
自分の親族を見下す。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第七の破滅です。
第八をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「女遊び、酒、博打にふけり、
稼いだものを次から次へと浪費する。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第八の破滅です。
第九をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「自分の連れ合いに満足せず、
遊女のもとに通い、
他人の連れ合いにも手を出す。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第九の破滅です。
第十をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「盛りをとうに過ぎた男が、
まだ若い娘を嫁にもらい、
嫉妬のあまり眠れなくなる。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第十の破滅です。
第十一をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「酒飲みで浪費家の女、あるいはそのような男を
権力の座につける。
それが破滅へと導くのです」

「おっしゃることはわかりました。これが第十一の破滅です。
第十二をお教えください。何が破滅へと導くのですか」

「財産は乏しいのに欲望は強く、
高貴な家に生まれた者が
王位を望む。
それが破滅へと導くのです。

この世にあるこれらの破滅を見て、
聡明で気高い人は、
正しい見識をそなえ、
穏やかな世界を楽しむことでしょう」

💡 解説・ポイント

歴史的背景

この経典はサーヴァッティーのジェータ林を舞台にしています。夜半に輝く天の存在が訪れるという神秘的な設定は、当時の聴衆の関心を引くための工夫でもありました。「道を踏み外す」原因として挙げられる項目は、不正直、傲慢、嫉妬、吝嗇など非常に具体的で、古代インド社会の日常的な倫理問題を反映しています。問答形式で進むため、聴衆が暗記しやすく、口伝えで広まりやすい構成になっています。

現代の私たちへのメッセージ

この経典で挙げられる「落とし穴」は、時代を超えて私たちの日常に潜んでいます。小さな嘘、他人を見下す気持ち、成功した人への嫉妬。どれも身に覚えのあることではないでしょうか。大切なのは、自分を責めることではなく、こうした傾向に気づくことです。気づけば修正できます。この経典は「完璧な人間になれ」と言っているのではなく、「自分の心を正直に見つめよう」と優しく促しているのです。

📚 重要用語

Parābhava衰退・道の踏み外し。人が自らの行いによって幸福から遠ざかることです。Musāvāda嘘をつくこと。信頼を損ない、自分自身をも傷つける行為です。Macchariya物惜しみ。持っているものを分かち合えない心の狭さを指します。

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