卑しい者
SNP 1.7: The Lowlife概要
火を崇拝する高慢なバラモンがブッダを「卑しい者」と罵ります。ブッダは「生まれではなく行いによって人の価値は決まる」と静かに応え、怒り・嘘・残酷さこそが本当の卑しさだと説きます。
Na jaccā vasalo hoti, na jaccā hoti brāhmaṇo; kammunā vasalo hoti, kammunā hoti brāhmaṇo.
📖 現代語訳
# 卑しい者
このように、わたしは聞きました。あるとき、ブッダはサーヴァッティーのジェータ林にある、アナータピンディカの僧院に滞在しておられました。
ブッダは朝早く衣を整え、鉢と衣を持ってサーヴァッティーへ托鉢に出かけました。そのとき、火を崇める聖職者バーラドヴァージャの家では、聖なる火がともされ、供物が準備されていました。サーヴァッティーを順番に托鉢して歩いているうちに、ブッダはバーラドヴァージャの家に近づきました。
バーラドヴァージャは遠くからブッダがやって来るのを見て、こう叫びました。「止まれ、丸坊主め! そこで止まれ、にせ修行者め! そこで止まれ、卑しい者め!」
これを聞いてブッダは言いました。「ところで聖職者よ、卑しい者とは何か、何が人を卑しくするのか、あなたはご存じですか」
「いいえ、知りません、ゴータマさま。どうか教えてください。卑しい者とは何か、何が人を卑しくするのかを理解できるように」
「それでは、聖職者よ、よく聞いて、心にとめなさい。話しましょう」
「はい、承知しました」とバーラドヴァージャは答えました。
ブッダはこう説きました。
怒りっぽく恨み深く、悪意があり攻撃的で、
ものの見方がゆがみ、偽りに満ちた人――
それを卑しい者と知りなさい。
胎から生まれた者でも卵から生まれた者でも、
生きものを傷つけ、いのちへの思いやりがない人――
それを卑しい者と知りなさい。
村や町を破壊し荒らし、
名うての圧制者として知られる人――
それを卑しい者と知りなさい。
村にいても野にいても、
他人のものを盗み、与えられていないものを取る人――
それを卑しい者と知りなさい。
借金をしておきながら、
返済を迫られると「あなたには借りがない」と言って逃げる人――
それを卑しい者と知りなさい。
ほんのわずかなものが欲しくて、
道行く人を襲って奪い取る人――
それを卑しい者と知りなさい。
自分のため、他人のため、あるいは金のために、
証人として問われて嘘をつく人――
それを卑しい者と知りなさい。
力ずくで、あるいは誘惑によって、
親族や友人の連れ合いに手を出す人――
それを卑しい者と知りなさい。
年老いて盛りを過ぎた母や父を、
できるのに世話しない人――
それを卑しい者と知りなさい。
母や父、兄弟、姉妹、義理の母を
殴ったり、言葉で傷つけたりする人――
それを卑しい者と知りなさい。
善いことを聞かれたのに、悪いことを教え、
秘密裏にそそのかす人――
それを卑しい者と知りなさい。
悪いことをしておきながら、
「誰にも知られませんように」と願う人。
その行いは陰にこそこそと隠される――
それを卑しい者と知りなさい。
よその家を訪ねて美味しいものをご馳走になりながら、
訪問を受けたときにお返しをしない人――
それを卑しい者と知りなさい。
修行者や聖職者、その他の助けを求める者を
嘘で欺く人――
それを卑しい者と知りなさい。
修行者や聖職者に食事を差し上げる時が来たのに、
罵って何も与えない人――
それを卑しい者と知りなさい。
起きてもいないことを語り、
迷いに包まれて、
何かを手に入れようとたくらむ人――
それを卑しい者と知りなさい。
自分を持ち上げ、他人を見下し、
おごりに引きずり下ろされた人――
それを卑しい者と知りなさい。
いじめっ子で、けち、
欲深く、吝嗇で、ずる賢く、
恥を知らず、思慮のない人――
それを卑しい者と知りなさい。
ブッダやその弟子を、
在家であれ出家であれ、侮辱する人――
それを卑しい者と知りなさい。
悟りを開いた聖者でもないのに、
悟りを開いたと自称する者――
聖なる存在を含むこの世界において、
その詐欺師こそ、まことに最も卑しい者です。
これらが卑しい者と呼ばれる人々であり、
わたしがあなたに明かしたことです。
**生まれによって卑しい者となるのではありません。
生まれによって聖者となるのでもありません。
行いによって卑しい者となり、
行いによって聖者となるのです。**
この実例をもって知りなさい。
死体を運ぶ仕事をする、最も低い身分の家の息子が
マータンガとして名を知られるようになりました。
マータンガは最高の名声を得ました。
それは非常に得がたいものです。
多くの貴族や聖職者が
彼のもとに仕えに来ました。
彼は天に至る汚れなき大道を上り、
官能的な欲望を捨てて、
天の世界に生まれ変わりました。
その生まれは、天の世界への再生を妨げませんでした。
聖職者の家に生まれ、
聖歌の一族として唱えを学んだ者たちが、
しばしば悪行の真っ只中にいるのが見つかります。
この世で非難され、来世では悪い行き先が待っています。
その生まれは、非難や悪い行き先を防いではくれません。
**生まれによって卑しい者となるのではありません。
生まれによって聖者となるのでもありません。
行いによって卑しい者となり、
行いによって聖者となるのです。**
こう説かれたとき、火を崇める聖職者バーラドヴァージャはブッダにこう言いました。「すばらしい、ゴータマさま。まことにすばらしい。今日からどうか、わたしを生涯の帰依者としてお覚えください」
このように、わたしは聞きました。あるとき、ブッダはサーヴァッティーのジェータ林にある、アナータピンディカの僧院に滞在しておられました。
ブッダは朝早く衣を整え、鉢と衣を持ってサーヴァッティーへ托鉢に出かけました。そのとき、火を崇める聖職者バーラドヴァージャの家では、聖なる火がともされ、供物が準備されていました。サーヴァッティーを順番に托鉢して歩いているうちに、ブッダはバーラドヴァージャの家に近づきました。
バーラドヴァージャは遠くからブッダがやって来るのを見て、こう叫びました。「止まれ、丸坊主め! そこで止まれ、にせ修行者め! そこで止まれ、卑しい者め!」
これを聞いてブッダは言いました。「ところで聖職者よ、卑しい者とは何か、何が人を卑しくするのか、あなたはご存じですか」
「いいえ、知りません、ゴータマさま。どうか教えてください。卑しい者とは何か、何が人を卑しくするのかを理解できるように」
「それでは、聖職者よ、よく聞いて、心にとめなさい。話しましょう」
「はい、承知しました」とバーラドヴァージャは答えました。
ブッダはこう説きました。
怒りっぽく恨み深く、悪意があり攻撃的で、
ものの見方がゆがみ、偽りに満ちた人――
それを卑しい者と知りなさい。
胎から生まれた者でも卵から生まれた者でも、
生きものを傷つけ、いのちへの思いやりがない人――
それを卑しい者と知りなさい。
村や町を破壊し荒らし、
名うての圧制者として知られる人――
それを卑しい者と知りなさい。
村にいても野にいても、
他人のものを盗み、与えられていないものを取る人――
それを卑しい者と知りなさい。
借金をしておきながら、
返済を迫られると「あなたには借りがない」と言って逃げる人――
それを卑しい者と知りなさい。
ほんのわずかなものが欲しくて、
道行く人を襲って奪い取る人――
それを卑しい者と知りなさい。
自分のため、他人のため、あるいは金のために、
証人として問われて嘘をつく人――
それを卑しい者と知りなさい。
力ずくで、あるいは誘惑によって、
親族や友人の連れ合いに手を出す人――
それを卑しい者と知りなさい。
年老いて盛りを過ぎた母や父を、
できるのに世話しない人――
それを卑しい者と知りなさい。
母や父、兄弟、姉妹、義理の母を
殴ったり、言葉で傷つけたりする人――
それを卑しい者と知りなさい。
善いことを聞かれたのに、悪いことを教え、
秘密裏にそそのかす人――
それを卑しい者と知りなさい。
悪いことをしておきながら、
「誰にも知られませんように」と願う人。
その行いは陰にこそこそと隠される――
それを卑しい者と知りなさい。
よその家を訪ねて美味しいものをご馳走になりながら、
訪問を受けたときにお返しをしない人――
それを卑しい者と知りなさい。
修行者や聖職者、その他の助けを求める者を
嘘で欺く人――
それを卑しい者と知りなさい。
修行者や聖職者に食事を差し上げる時が来たのに、
罵って何も与えない人――
それを卑しい者と知りなさい。
起きてもいないことを語り、
迷いに包まれて、
何かを手に入れようとたくらむ人――
それを卑しい者と知りなさい。
自分を持ち上げ、他人を見下し、
おごりに引きずり下ろされた人――
それを卑しい者と知りなさい。
いじめっ子で、けち、
欲深く、吝嗇で、ずる賢く、
恥を知らず、思慮のない人――
それを卑しい者と知りなさい。
ブッダやその弟子を、
在家であれ出家であれ、侮辱する人――
それを卑しい者と知りなさい。
悟りを開いた聖者でもないのに、
悟りを開いたと自称する者――
聖なる存在を含むこの世界において、
その詐欺師こそ、まことに最も卑しい者です。
これらが卑しい者と呼ばれる人々であり、
わたしがあなたに明かしたことです。
**生まれによって卑しい者となるのではありません。
生まれによって聖者となるのでもありません。
行いによって卑しい者となり、
行いによって聖者となるのです。**
この実例をもって知りなさい。
死体を運ぶ仕事をする、最も低い身分の家の息子が
マータンガとして名を知られるようになりました。
マータンガは最高の名声を得ました。
それは非常に得がたいものです。
多くの貴族や聖職者が
彼のもとに仕えに来ました。
彼は天に至る汚れなき大道を上り、
官能的な欲望を捨てて、
天の世界に生まれ変わりました。
その生まれは、天の世界への再生を妨げませんでした。
聖職者の家に生まれ、
聖歌の一族として唱えを学んだ者たちが、
しばしば悪行の真っ只中にいるのが見つかります。
この世で非難され、来世では悪い行き先が待っています。
その生まれは、非難や悪い行き先を防いではくれません。
**生まれによって卑しい者となるのではありません。
生まれによって聖者となるのでもありません。
行いによって卑しい者となり、
行いによって聖者となるのです。**
こう説かれたとき、火を崇める聖職者バーラドヴァージャはブッダにこう言いました。「すばらしい、ゴータマさま。まことにすばらしい。今日からどうか、わたしを生涯の帰依者としてお覚えください」
💡 解説・ポイント
歴史的背景
古代インドのカースト制度のもとでは、生まれによって人の価値が決められていました。バラモン(祭司階級)は自分たちが最も高貴だと考え、他の階級を見下すことがありました。この経典でブッダは、当時の社会常識に真っ向から挑み、「卑しさ」とは血筋ではなく行動によって決まると宣言しました。これは二千五百年前の古代インドにおいて、非常に革新的で勇気ある主張でした。
現代の私たちへのメッセージ
出身地、学歴、職業、収入などで人を判断しがちな現代社会にも、この教えは強く響きます。SNS上での差別的な言葉や、無意識の偏見は今も根深い問題です。ブッダが伝えたのは、その人がどこから来たかではなく、今どう生きているかが大切だということです。他者をレッテルで判断せず、一人ひとりの行いを見ること。そして自分自身も、行動で示せる人間でありたいと思わせてくれる経典です。
📚 重要用語
Vasala卑しい者。ブッダは生まれではなく行いによって決まると教えました。Jāti生まれ・出自。カースト制度の基盤であり、ブッダはこれを否定しました。Kamma行い。その人の価値を決める本当の基準です。
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